決別

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　あなたは、部屋を出てシャワーを浴びる。帰宅後の毎日の日課だ。その狭い個室の空間では、裸の素肌と同時にすべてを曝け出すことができるのだろう。
　パジャマに着替えたあなたは程よく上気した顔をして、自室の机の前に座る。パソコンを起動し、眠る前のひと時を過ごすのだ。様々なサイトを訪れ、顔も名も知らぬ知人の書いた文章や写真、イラストを眺めて過ごす。ときにはそこへコメントを残すこともある。そのときのあなたは仮面を脱いだまま、仮面を被った文章を書く。この時ばかりは、自分を守るために仮面を被る必要はない。ネットの世界を覆いつくす巨大な匿名性という仮面がすでにあなたを庇護下に置いているからだ。むしろ、いつ罅割れるかわからない自らの作り出す日常の仮面よりも安心感はずっと大きかろう。
　それでも、いつ破損するか知れないものであったとしても、それはそれで高い守備力を持ってはいるのだが……。