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「君、そういう君はあのお嬢さんを見張って、どのくらいの時間を過ごしてるんだ？」
「それには理由があるのさ」
加藤は事務机にうず高く積み上げられた書類の、一番上に置かれた新聞を取ると、無造作に私に投げて寄越した。
「時事の頁の下段、尋ね人の欄を見給え」
「ふむ。『信治父キトクカエレ……しず連絡待ツＪ』毎日変わりばえせん通信欄だなあ。……おや、『女子事務員急ギ募集ム』なんとまあ、君の事務所じゃないか！ ついに人を雇うのか」
「まあね。全く儲かってないわけじゃなし。むしろ最近は依頼が多くて、断るのに困るくらいだからね」
「なら必要なのは、事務員じゃなくて助手のほうじゃないか？」
「とりあえずは、溜まりに溜まった書類の整理や来客の応対をしてくれる人が必要なのさ。本格的に探偵助手を雇うのは、それからでいい。おや、ついに心が決まったと見える」
暫くして、トントントンと部屋の外から木製の扉を控えめに叩く音がした。
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