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加藤が猟犬なら私は雑種かな? などと思っていると、加藤が採用を告げる声が聞こえてきた。
「身上書持参いたしましたが、ご覧にならなくて宜しいんですか?」
娘の声は少し上ずっている。
「実はだいぶ前からここで貴女の様子を拝見していました」
加藤の言葉に、娘はやや面喰らった様子を見せた。
「貴女の服装、歩き方などで大体のことはわかります。早速ですが、もう今日から勤務していただけますか? ええと……天知光子さんですね」
加藤は彼女から渡された身上書を開き、目を通しながら言う。
天知という娘は、そこでようやく私の方をちらと見て会釈した。
やや厚ぼったいまぶたに覆われた目は切れ長で澄んでおり、真っ直ぐ伸びた高い鼻梁は高貴と言っていい。
加藤は身上書に目を落としたまま、彼女に言った。
「ああ、こちらの男は私の警察官時代の友人で、大河内平八といいます。私に色々と仕事を斡旋してくれたりもする現役の刑事です」
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