元カレからの電話

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「当時から、卓也のほうはともかく、女たちが卓也を放っておかなかった。だから、卓也の周りにはいつも女たちがいた。私は愛されているのは自分だけという自信はあったけど、それでも時に卓也を疑うことがあった。それで、ある日卓也がお風呂に入っている時に、携帯や開いたままのパソコンの中を探ってしまったの。そうしたら、パソコンのお気に入りの中に、ある女性の写真を発見してしまったの。その女性は、それまで私が知っていた卓也の周囲にいた女性ではなかった。しかも、とてつもなく綺麗な女性だった。写真の多くは自撮りの写真で、卓也と一緒に映った写真はなかったけど、私は自分でもどうしようもないほど嫉妬したわ」  この時、卓也は麻衣の言葉からすべてを察したようだった。 「どこかで見たことがあるような顔でもあったけど、その時はただショックだったのよね」 「そうか…」 「それからというもの、チャンスを見つけては卓也のパソコンの中を覗いた。その女性の写真は少しずつ増えていた。しかも、日頃卓也が言っていた女性の好きな仕草を、その女性はしていた。でも、何度も何度も見ているうちに気づいてしまったの。その女性が卓也自身だということに」  ついに言ってしまった。 「知っていたのか…」  卓也は唇を噛んでいる。 「その時私は、卓也が理想の女性を自分の中に見つけてしまったことを知ったの。私なんか、どうあがいても敵わないと思ったわ。その人は、ものすごく綺麗で、知的で、それでいて極めて女らしく、優雅で、きっと優しい。それに比べて、私は、わがままで、勝ち気で、少し意地悪で、素直じゃなくて、それほど美人でもないし、太刀打ちできるわけないじゃない」
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