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「『小石』…、別の言い方は『細石』。二人組の忍で、土竜の形態変化………心当たりはもう奴らしかいない。…細姉弟だ。」
「細姉弟って……、姉さっ…じゃない、英様、あの軒猿の新手の忍の事ですか?!かなり手強いと聞きます…。」
二人静さんは驚いたように訊く。
「他ないだろう。」
英さんも溜息混じりにそう呟く。
「英ちゃん、その忍の情報を詳しく聞かせてもらえるかな?」
「えぇ、…あっ!官兵衛様、アタイよりコイツの方が詳しいのでコイツに聞きましょう。なにせ、細姉弟の情報を一番最初に持ってきた張本人ですので。」
英さんはそう言うと、瑠璃さんの口に塗った青い塗料を解く。
「んっ!おい、ハナよ…、良くも俺に…!!」
口についた青い塗料が消えた瞬間、瑠璃さんはすっかり元の調子に戻った。
「どうでも良いから、細姉弟の情報詳しく教えてくれる?」
「はぁっ?…急になんでぇ…?」
「良いからっ!!」
「へいへい……。細姉弟はここ最近で急に流行り出した忍でな。ほんの二、三年前までは名前すら聞いたこともないような連中だった。どうやら、名が知れるようになったのは軒猿に入ってかららしい。それまでの経歴は一切不明。姉の君代と弟の八千代、この二人で常に行動を共にし、任務をしくじった事は一度もないらしい。ただ…、そのやり方が、しくじりはしないが、軒猿という名前を背負っている割にはどうも仕事が汚くてな。その名の下に悪行のかぎりを楽しんでいるような感じだな。たまたま生きていた被害者によれば、『地面からいきなり現れた』とか『どこへ隠れていても見つかる』とか『アイツに喰われた人間がいる』と証言している。…まぁ、こんなとこか?」
「辻褄が合うな…。瑠璃、奴ら軒猿なのは間違えないんだろ?」
「あぁ。」
「なら、任務の命を出しているのはやはり上杉謙信なのか?」
「詳しくはまだ探れてはいないが、どうも上杉家は謙信意外に同じぐらいの権力を持っている奴が謙信が主君になる前から居るらしい。家臣や軒猿の間でも、そいつ派と謙信派がいて内政うまくいっていない所があるとかで、そいつは謙信の主君の座を狙っているとか。…まだ本当の話かどうかわからんが、そいつの行動はここ数年で著しくなってきているらしい。でも…、考えてみりゃあ、そんな話が俄かに出てきた頃だよなぁ、細姉弟の噂が立ち始めたのも。」
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