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「へっクション!!…あぁー。」
「あぁ~あ、また誰かが、悪い噂でもしてるんじゃねぇの?」
派遣社員の 黒葛はからかった。
「そのようだねぇ。」
碧い髪の女は、薄ら笑いを浮かべながらも、どうでも良さげに言った。
「そう言やぁ、今年は新入社員の中に女の子が居たっけねぇ?アンタが入ってきた時のことを思い出しちまったよぉ。」
「入社当時はあんなに可愛かったのかねぇ?アタシは。」
「そりゃぁ可愛く見えるさぁ。こんな工場の現場に女の子なんてなかなか居ねぇしよぉ?…まぁ、あの子も今まで入ってきた子らみたいに、入社して何ヶ月ですぐ辞めたぁー…なんて事がなきゃ良いけどなぁ。」
過去を思い出しながら、いつもその繰り返しだとでも言いたげに皮肉混じりに黒葛は言った。
「……いや」
「…っ?」
その女の口からの否定は、黒葛にとっては意外だと思えるものだった。
「あの子はそう簡単に辞めるような子ではなさそうだ。」
「根拠は?」
「…目が違う。」
「ほぉ~…。目ねぇ。目を見りゃぁ、人が分かるなんて言うぐらいだもんなぁ?」
「あの子……、ひょっとしたら将来、凄い子になるかもしれないよ…。」
女は、その子の目から伝わる何かを察していた。
そんな話を二人でしていると、工場の入り口から月出とその子が入ってきた。
「噂をすれば、なんとやら…ってか?余分なオヤジのおまけ付きだがなぁ?」
「…そのようだねぇ。」
「白鳥ー!ちょっと来てくれぇー!」
月出が呼んだ。
「ほぉ~ら、さっそくご指名だぞぉ~」
「おぃ!、黒葛お前もだぁー!」
「ほらぁ、ヅラおじさんもだって。」
二人は、月出のもとへ駆け寄った。
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