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後編*長すぎる夢の先に見たもの
母校の中学に戻ってきて教職に就いたルディは、妻になったリタからはもちろんのこと、受け持ったクラスの生徒たちからも愛されて幸せな日々を過ごしていた。
ただ、教室の隅で、いつもつまらなそうな顔をしている女生徒フウのことだけは、彼の唯一の気がかりだった。
ある日の放課後、ちょっとした事件が起きた。
珍しくフウがクラスの女の子たちから「フウちゃんも遊ぼう」と声を掛けられているのを廊下で目にして、ルディが胸を撫で下ろしたのも束の間。
「私は良い。うっとうしいから、構わないで」
氷柱のように冷たい言葉で容赦なくクラスメイトを斬りつけたフウを目にして、彼は愕然とした。彼女に突っぱねられた女の子たちはすっかり怯え切って、泣きべそをかきながら走り去っていった。
一連の出来事を見届けてすっかり蒼褪めきったルディは、耐え切れなくなって、未だに憮然とした顔つきをしているフウの下へ駆け寄った。
「フウ。今の態度は、流石に酷いんじゃないか」
「……別に。せんせーには関係ないでしょ」
「その言い方はないだろ……? みんな、お前のことを心配してるのに」
フウの、ビー玉のような瞳で睨み返された時、彼の胸はびくりと震えた。
「そういうのが、一番迷惑。せんせーみたいな幸せな人には、一生、分からないよ」
呪詛のような言葉を叩きつけると、フウはルディから逃げるように走り去った。
ルディは、フウを追いかけることができなかった。
実際に自分は恵まれているという自覚が、彼の足を抑えつけた。
結局、淋しい気持ちで、小さくなっていく背中を見つめていることしかできなかった。
それからもフウは、相変わらず教室の隅で、つまらなそうに頬杖をついていた。
彼は、まるで人形のように感情の欠落しきったフウの姿を見るたびに心が痛んだけれど、彼女と再び面と向き合って話し合う勇気も持てないでいた。
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