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その日の夜。
ルディは、夢を見た。
雲一つない、澄み切った楽園の空も。
爽やかな香りのするあの大きな樹木も。
そよそよと彼の頬を撫でてゆくやさしい風も。
ここ半年間、彼が見続けてきた光景と、何一つ変わらなかった。
唯一つだけ。
どんなに立ち尽くして待っても、リタが現れないことだけが違っていた。
ハッとして、ルディは夢から目覚めた。
とめどなく涙が溢れ出して、このまま狂ってしまいそうだった。
泣いて、泣いて、このまま干上がってしまうのではないかという程に彼は泣き続けた。
それでも。
ルディが美しい夢の中でリタと戯れた後、目を醒ますたびに必ず襲われていた身体中を突き抜けるような激痛に苦しむことだけはなくなっていた。
代わりに彼の心は、冬の朝にも似た透明なさみしさで満たされていた。
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