前編*光り輝くような幸福に包まれて

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前編*光り輝くような幸福に包まれて

 二人が出逢ったのは、二十二年と半年前のこと。  彼らは、自然の恵みに溢れた田舎街ケレイスで生まれ育った。  家がお隣さん同士で両親同士の仲も良かったルディとリタは、自我が芽生え始めた頃には、当たり前のように一緒に過ごすようになっていた。  青い瞳で男の子の方がルディで、碧の瞳で女の子の方がリタ。幼い頃はそんな風に称されるほど見た目も雰囲気も似通っていた二人は、いつどこへゆく時も一緒だった。  春が訪れれば山へピクニックに出かけ、夏が来れば川へ透明な魚を釣りにゆく。秋になったら森へ色とりどりの果実を採取し、冬には同じソリにまたがって銀世界の中を駆け抜けてゆく。  ルディは天真爛漫で健気だけど抜けている彼女のことを実の妹のように可愛がっていたし、リタは賢くて優しいけれども少しだけ泣き虫な彼のことをの本当の兄のように深く慕っていた。  幼い二人が無邪気に駆けずりまわっている姿は微笑ましく、ケレイスの人々はじゃれあう二人の姿を和やかに見守っていた。  どこへいくにも双子星のようにぴったりと寄り添って行動していた二人にとって、お互いのことが誰よりも大切になるまではそう時間がかからなかった。  その親愛の情が歳を重ねるにつれて異性愛へと花開いたのは、水が高いところから低いところへ滑り落ちるのと同じくらい自然なことだった。
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