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その日も、ルディは灰色に塗り潰された教室を冷めた瞳で見下ろしながら、授業を終えた。昼休みを告げるチャイムの鐘が鳴り響く。
随分とやつれきった身体で迷うことなく屋上へと足を向けた彼は鉄柵にもたれかかって、そっと瞳を閉じた。
この頃のルディの精神は夜の夢だけでは支えきれなくなっていて、彼は昼にもリタの姿を求めて眠るようになっていた。
眠っている時にだけ、ルディはリタに逢える。
再び瞳を開いたとき、彼女は今日も、眩しい青空の下でやわらかい微笑を浮かべながら彼の隣に座っていた。リタの柔らかい亜麻色の髪を撫でながら、彼はぼんやり考えていた。
永遠に、この夢から醒めなければ良いのに。
だって、夢から醒めてしまったら――
『……せんせー、起きてっ』
――嫌だよ。リタのいない世界になんて、価値はない。僕は、この幸せな夢の世界で、永遠に微睡んでいたい。
その無遠慮な手はぺちぺちと彼の頬を叩くことをやめない。必死に、夢の中のリタからルディを引き剥がそうとして、もがいていた。
身体を揺さぶられ続けてわずらわしくなったルディがハッと瞳を開いた時、目の前には、今にも泣きそうに顔を歪めて彼の腕を掴んでいるフウの姿が目に入った。
「どうして、起こしたりするの!」
「……せんせーが、苦しそうだったから」
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