0人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
川合 総。25歳、住所不定無職。ぎりぎり童貞じゃないだけ救い……にはならないな、別に。
「家賃、高ぇ……」
ネカフェで近隣の物件情報を検索した俺は溜息をついた。そりゃ交通アクセスもいいし、わりと最近都市開発が進んでるとは言え、ワンルームで6万って。確かに駅近物件だけどユニットバスの鉄筋アパートだぞ? 築年数だってそう新しくねぇぞ?
「それで6万かよ……」
だが、ソレが実は格安な方だった事を俺はすぐに知った。
「マジか……家賃ってこんなかかんのか……」
ずっと実家で、就職で都市部に出てきたけど会社の寮生活だったから知らなかった。
え、ちょっと待てよ。コレに更に光熱費と携帯代と食費その他諸々が加算されんだろ?
「どんだけ稼がねぇといけねぇのよ……」
知らなかった。生きるってこんなに金かかるんだ。
それに。それにだ。外食するには金かかる。じゃあ自炊ってなると鍋やフライパン、調味料だって最低限は必要で。
そもそも炊飯器や冷蔵庫、洗濯機に掃除機。引越しには初期費用がかかる。家賃だって前払いで敷金礼金が要る。保証人不要なら尚更だ。保証会社入れるのも仲介料がかかる。
「生きるって金かかるんだなぁ……」
とりあえず煙草一本吸って現実から逃避した。
「……いつまでもネカフェ難民も無理だよなぁ」
ただいま、現実。
実家に戻るつもりは更々無い。そもそも就職先が無いから都市部に出て来たんだし。兄家族の厄介になるのも嫌だ。近々、三人目が産まれるって家庭にお邪魔虫するほど図太い神経してたら、今こうして無職になってない。
「はぁ……」
とりあえずネカフェでシャワーを浴びてから外に出た。不動産屋の硝子に貼られた物件情報を覗く。どれもやはり高い。
思い切って店内に入ってみる。
「あの、築年数は気にしません。とにかく安い物件を緊急で探してるんですが」
何なら事故物件でも構わん!
さすがに口には出さないが。幽霊なんか信じてないし、そんなのに構ってる余裕も無いんだ、こっちは。
最初のコメントを投稿しよう!