手紙2

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手紙2

 わたしはあなたに手紙を出しました。  なんだか、はっと思い立って、手紙を出さなきゃいけないと思ったのです。  それは、ちょうど三年前。  金木犀の香りがとても印象的な、昼下がりのことです。  陽光は暖かく、冬の気配はまだ感じませんでした。  わたしはお気に入りの万年筆で、真っ白な便箋に綴ります。    「この手紙をあなたが読む頃には、わたしはこの世にはいません」  こんな書き出し、よくありますよね。  じゃあ、これはどうでしょうか?  「この手紙をあなたが読む頃には、わたしはあなたの一番近いところにいます」  あなたのそばで笑っているわたし。  もしかしたら、一緒にその手紙を読んでいるのかもしれないですね。  それってとても素敵なことではないでしょうか?  わたしはそう思いますけど。
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