「猿」

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緑川は、黒い包帯の男の方を見て、白木の首に刀の刃が届きそうなのを確認すると、ゆっくりと頷く。 「あなた方が来たのは、あなた方の世界とは違う世界。あなた方が異世界やパラレルワールドと呼んでいるものですよ。あなた方には、「魔王」を倒していただきたいのですが……」 黒い包帯の男は、片手で緑川の手を強く握りながら、それでも、もう片方の手は白木の首に向けた刀をズラすことなく、まるで裏切るなと警戒するかのように緑川の方を見る。 「どうやら、先に来られた「赤の勇者」様は、「虎」の化け物に囚われてしまったようでして……」 「オレに炎を助けに行けと?」 「いえいえ、「虎」は危険な相手ですので、経験を積んでからの方がいいでしょう。この世界には、「魔王」と、その配下の12の化け物がいるのですが、まずは能力的に相性の良い「兎」から倒していただければ。」 「能力?」 「この刀、一見短い刀かもしれませんが、勇者様が使えば風を生み出すことができます。この刀があれば、素早い「兎」や「鼠」も簡単に倒せるでしょう。」 「炎は助けなくてもいいのか?」 緑川は、赤岩が黒い包帯の男と敵対した可能性を考え、安否の確認のため質問をした。 「いえいえ。準備が整えば、助けに行きましょう。ですが、まずは「兎」を倒しに。」 正確な安否までは不明だが、今、黒い包帯の男が掴んでいる情報では無事ということがわかったため、一先ず息をつくと、これ以上黒い包帯の男を警戒させないために、 「……わかった。」 「兎」の討伐依頼を了承をする。 「そうそう。「赤の勇者」様の件もありますから、護衛を付けておきましょう。」 だが、黒い包帯の男を警戒させないつもりだったが、結果的には、黒い包帯の男は、緑川に5人の護衛という名目の監視と、監視だけのための忍びをつける。
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