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「ブハハハ、話し合うと言っているのだ。戦うのなら武器を奪うのも1つの手だが、話し合うと言っている相手から奪うのは、こそ泥と同じだぞ!」
「うる……!!!……「虎」!!そうか、ここは、「馬」の国、「虎」がいてもおかしくないか。だが、オレはあんたみたいに会ってすぐの人間を信用するほどお人好しじゃねーんでな。この刀は、預からせてもらうぜ!」
兵士は一瞬にして、人の皮のようなものを脱ぎ捨てる。兵士に扮していた17才~18才ぐらいの青年が現れる。
「ほう……「猿」ごときがワシから逃げられるとでも思っているのか?」
「虎」と呼ばれた大柄な男の体が、より大きくなっていく。
顔は虎になり、赤岩を包めるほど大きくなった手からは、爪の代わりに5本の刀が付けられている。
黄色と黒の毛と巨大な鎧兜に身を包んだ「虎」が、手を振り下ろすと、地面が割れ、その割れ目から温泉が沸き上がる。
「いっ!?さすがに、敵いそうにないが、このまま逃げるぐらいならできるはず!氷術・冷道!!」
「猿」の忍法により、沸き上がった温泉のお湯の上部が凍りつき、「猿」はそれを足場に逃げようとするが。
「甘い!」
「虎」は高く飛び上がり、両手の10本の刀で足場の氷を割る。
足湯を失った「猿」は、空中で回転しながら、上手く地面に着地するが、「虎」の刀が「猿」に向けられる。
「待って!」
赤岩は、「虎」と「猿」の間に割って入る。
「その刀で戦うのをやめてくれるなら、その刀は渡すから!」
赤岩の言葉に「虎」は動きを止める。
「坊主、何故そこまでして「猿」を助けようとする?」
「虎」は、かがみこみ、赤岩に問いかける。
「あの人も悪い人ではないから。オレを倒そうと思えば倒せたはずなのに、武器だけを奪ったってことは、戦いを避けたいんだ。みんな戦いたくないなら戦わない方がいい。」
そのとき、「猿」の持っていた炎の刀が燃え上がる。
「アチッ!」
「猿」は、炎の刀の熱さに思わず手を離してしまう。
「チッ!こんな刀、もういらねー。」
「猿」は、人間ぐらいの大きさの猿の姿に変わり、地面を駆けると木々を渡って去っていく。
「手に持ってなくても、炎を出すとは、どうやら「猿」が言った通り、その呪いの忍刀を使う存在というのは本当らしいな。どれ、坊主、「馬」に用があるならワシが案内してやろう。」
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