3/3
前へ
/3ページ
次へ
「……決めた!」 「きーめた!」  二人は同時に結論を出した。 「僕たちもあの中に!」 「入る!」  合いの手をかわすついでに結論を導き出す。 「眺めているより参加した方がきっと楽しいよ」 「どのくらい楽しいのかなあ、小さくなって眺める星や青空ってどんなかなあ」 「きっとでっかいよ、デーッカイ」  でーっかい、と両手を上げて表現する片割れ。  星をイスにし、世界を眺める彼らは大きい。  気まぐれで人くらい小さくなったりもしていたから、どちらが正解ということもないのだが。 「あの中に入るときはやっぱりわたしたちも一緒?」 「もちろん! なんたって僕ら神さまだからね!」 「やったやったあ」 「でも全部思い通りじゃつまんないから、ちょっとだけ気まぐれ入れようか」  いいかい、と片割れは言う。  これから僕たちはあの中に入る。  でもお互い何に変わるかはわからない。 「もしかしたら夫婦かもしれないし」 「きょうだいかもしれないし」 「大きな大木とそれを止まり木にする小鳥かもしれない」 「ヤドカリとヤドカリのカラの上に住むイソギンチャクかもしれないね!」 「でも絶対ずっと一緒!」 「いーっしょ!」  いったいどちらが話しているのかわからないままゴチャゴチャと話し合い、結論が出た。 「いっせーのせで入るよ」 「いっせーの」 「せっ!」  今までの思い出は投げ置き、手だけは繋ぎながら、 「また出会うまではさよならだね」 「……うん」 「……さよなら!」 「……さよなら!」  つかの間のさよならを、二人同時に言う。  二人がいた。二人は二人、一人じゃない。  二人が捨て置いた、一緒に星を数え、世界をいじって笑った記憶が証明している。  二人はまた出会うまで、一人になった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加