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死んだ娘宛てに、これからも手紙が来るなんて嫌に決まってる。受け入れられるわけない。
焦って咄嗟に言ってしまった事を後悔した。理由も言い訳も出て来なかった。
ただ、お母さんを困らせただけだった。
それなのに、お母さんは私が口を閉じて下を向いていたら、
笑って、わかったわ。と言ってくれた。
いいの? と聞いても、
ただ、ええ。と笑って返してくれた。
気付いたら私はお母さんに抱き着いて、ありがとうと言っていた。
そんな私を、お母さんは優しく両手で包んでくれた。
何も聞かずに我儘を聞いてくれたことが、本当に嬉しかった。
2016年 7月 15日
桜としての生活と、春香としての2重生活が始まった。
最初は混乱するかもと心配だったんだけど、一君の手紙が来るのは月に2回から3回のペース。
その時だけ春香に戻ればいいだけだったから、意外と割り切って両立する事が出来た。
家で療養中の私と違って、一君は毎日ちゃんと学校に行ってるから、書く内容に困らないみたい。楽しそうに送ってる学校生活を羨ましいと思いつつ、私は一君の手紙を読むのが楽しみだった。
一君には一君の世界が有って、その世界には私が居る。
それが、どれだけ当時の私を救ってくれたことだろうか、
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