第2章 加奈の場合。

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今年になって加奈は推薦で大学を決めた。高校と大きく違うのは学費であった。文系私立で年間90万、入学費用を入れると120万かかった。単純に月10万円はかかる。奨学金など借りようものなら、加奈が40歳をこえるまで月3万弱を払っていかなくてはならない。利子をつけて約700万を返すのだ。     * ゆかりは、加奈の水商売に反対した。奨学金でいい、と言い張るのだ。しかし加奈にしてみれば大きな負担だ。就職したってもらえる給与は高が知れている。ゆかりの兄や妹の家庭にも大学生がいるので、援助を乞うわけにはいかなかった。 加奈は、4月から勝手に働き始めた。友人とともに「体験入店」をしてみたが、想像していたより怖いものではなかった。イメージクラブというもので、高校の制服やナース姿で働くのも苦ではなかった。週4回、5時間で30万近くにはなる計算だ。それに出来高も加わると簡単に母を超えて儲けることができる。とにかく母を楽にさせたかった。こうして入店して5カ月が経とうとしている。     *  高島学(たかしまがく)が店に現れたのは加奈が夏休みに入ったころだった。店で一番若い子、と指名してきた。 「えーありがとうございますー」加奈はとりあえずブレザーとタータンチェックのミニスカートで高島の席に着く。 「あーん、意外と可愛いじゃん。名前は?」 「麗奈です、よろしくお願いします」 「おれ、ガク。とりあえずなんかシャンパン入れてよ」 加奈は固まった。こんなすぐに指名されシャンパンを入れてくれるのは初めてだ。     
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