第2章 加奈の場合。

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歳は40過ぎ、格好はポロシャツにスラックス。時計をよく見るとパテックフィリップだ。「なんてお呼びしたらいいですか?」加奈は訊いた。 「ガク。麗奈、本名は何?」ガクは当然のように訊いた。 「・・・加奈です」 「じゃ、加奈でいいな」そう言っている間にシャンパンが来た。サービスワゴンで。 乾杯の後、肩を組まれた。店ではご法度だ。でも言えない。 「学生?OL?」 「学生です。ガクはお仕事何?」 「ふどーさん」 「すごーい、羽ぶりいいんですね」 「あとつぎ、跡継ぎ」 「今日はお仕事?」 「仕事っちゃ、仕事。遊びっちゃ遊び」ガクは言った。(うざい)加奈は思った。 「遊びはなんですか?」加奈は話をつなげた。 「ん、まあ、セミナーとか。俺にとっちゃセミナーは遊びだよ」ガクはセミナーの話題から土地活用、人脈、資産運用まで、語りはじめた。  一応勉強のつもりで聞いてやった。  「ガク、すごいんだね。ためになる」加奈はタメ口を利いてやった。その方が喜びそうだ。  「趣味は?」  「仕事だよ、ははは、うそ。スィーツ食べ歩きかな」  そして原田近辺の洋菓子店の話が始まる。     * 「うしゃ、帰ろかな、カードでね」アメックスのブラックカードだ。     
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