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「ちゃうよ。どういう意味かわかるだろ?」
「え?」
「今この場で履きかえてよ」ガクは言い出しにくそうに言った。
「いいけど、あとでもよくない?」
「今履いてる靴下、俺にちょうだいってこと!」ガクは言った。
(き・も・い・・・・)加奈はどん引きした。カラオケが失敗だ。
「お前の成長を匂いとして残しておきたいんだ」
(げー―――――逃げたい)加奈は後悔した。
「ま、まずは曲入れよ」
加奈は必死に太ももや胸に触るガクの手を追っ払いながら歌った。早く店に帰りたかった。
抵抗すること1時間、携帯を取り出し「あ、店から帰るよう命令です」といって小走りにその場を逃げ去った。
*
加奈は店に帰って店長に報告した。次からは入店拒否にしてもらおうとした。しかし答えはノーであった。カラオケに行ったのがよくない、店の中でうまくあしらえ、とけんもほろろであった。なにしろこの日だって10万を落としていったのだ。キャバクラの沙汰も金次第ということか。加奈は店の酒をがぶ飲みした。店長はおもむろに加奈に名刺を渡した。
『鬱憤館』北川洋太郎。名刺の裏にはマップが書いてある。
「行ってみ」店長は言った。
*
加奈は駅の南口を降り、原田川沿いの店に向かった。
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