第2章 加奈の場合。

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「ちゃうよ。どういう意味かわかるだろ?」 「え?」 「今この場で履きかえてよ」ガクは言い出しにくそうに言った。 「いいけど、あとでもよくない?」 「今履いてる靴下、俺にちょうだいってこと!」ガクは言った。 (き・も・い・・・・)加奈はどん引きした。カラオケが失敗だ。 「お前の成長を匂いとして残しておきたいんだ」 (げー―――――逃げたい)加奈は後悔した。 「ま、まずは曲入れよ」 加奈は必死に太ももや胸に触るガクの手を追っ払いながら歌った。早く店に帰りたかった。 抵抗すること1時間、携帯を取り出し「あ、店から帰るよう命令です」といって小走りにその場を逃げ去った。     * 加奈は店に帰って店長に報告した。次からは入店拒否にしてもらおうとした。しかし答えはノーであった。カラオケに行ったのがよくない、店の中でうまくあしらえ、とけんもほろろであった。なにしろこの日だって10万を落としていったのだ。キャバクラの沙汰も金次第ということか。加奈は店の酒をがぶ飲みした。店長はおもむろに加奈に名刺を渡した。 『鬱憤館』北川洋太郎。名刺の裏にはマップが書いてある。 「行ってみ」店長は言った。     * 加奈は駅の南口を降り、原田川沿いの店に向かった。     
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