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ドタッ、加奈は上の看板を見て探しているうちに、、ヒールが看板の支柱にぶつかって転倒した。
「んもー、こんなとこに邪魔な看板、今日は、サ・イ・ア・ク!」と天を仰いだ。
そして看板を見ると
『鬱憤館』
ほの白く、薄汚れた看板はプラスチックでできていて、ヒビが入っている。
加奈は酔っていて漢字がぼやけてよく見えない。
「鬱・憤・館、ここ?」加奈は目を凝らした。
木製の大きなドアが1枚あるほかは、窓もなくコンクリートで塗られているだけだった。
(あやしい・・・)そう思った。
しかし同時にこの店は何屋か知りたくなった。一見すると会員制のバーか?いや、それほど高級感は無い。スナックか? いやそれにしては目立たない。
「店長が勧めたんだからまあ、安心か」加奈は入る決心をした。
重たそうな真鍮製のノブを引いてみる。
カランッコロンッ、小さなカウベルがノスタルジックな音を立てた。
「いらっしゃーい」初老の男性の声が奥から聞こえる。
加奈はまた眼を凝らし店の中を見回した。ここちよくジャズが流れている。
幅3メートル、奥行きは10メートルほどだろうか、薄暗い店内の天井からは電球をちりばめたようなシャンデリアが垂れさがっている。
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