第2章 加奈の場合。

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「いえいえ。お顔を拝見すれば、大体わかります」 「胡散臭っ。占い師ですか?」 「いえいえ。あなたが男性の馬鹿らしさ、お金のため頑張っていることは、わたくしにもわかります」 「なんでー」加奈は少し怖くなった。 「わかるからあなたはここにいる。天を仰いだわけですから」 「おじいさん、天から見ていたんだ」 「いえ、ここであなたをお待ちしておりました」     *  加奈は、どうせ夢だと思い、洗いざらい話した。父のこと、母の苦労、自分の頑張り、そして大学費用の高さ、キャバクラの出来事・・・ 北川は「ええ」「おや」「そうですか」を繰り返し、熱心に、そして穏やかに聞いているだけだった。ひと通り話し終えると 「麗奈様、いままで本当にご苦労されましたね」と言ってカクテルグラスにソルティードッグを注ぎ、加奈に差し出した。 「店主からのささやかなプレゼントでございます、どうぞ召し上がってください。麗奈様はまだお若い。シェフ北川の気まぐれ鬱憤プランでよろしいかと思いますよ、麗奈様は初めてですから1万円でご奉仕させていただきます」 「え?話を聞いてもらうだけじゃないんですか?」加奈は訊いた。 「とんでもございません、サービスはこれからでございます」     
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