第2章 加奈の場合。

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「い、いったい何をしてくれるんですか?」 「では、気まぐれプランですのでいまからわたくしがご提案さしていただきます」  北川は、やっと自分から語り始めた。     *  鬱憤館の屋上は、パイプラインやら浄化槽やらで雑然としていたが、地上10階からみえる原田の街並み、朝日が出て明るくなった西の方角には青く丹沢・大山連峰が美しく山の稜線を浮かび上がらせていた。  そんな屋上の片隅に10畳ほどのスペースがあって、赤く見たことのある物体が10数本並べておいてあった。消火器だ。 「それでは、麗奈様。お話したとおりこの消火器をご自由に撒いていただいて結構です。期限切れの消火器をある筋から譲ってもらったものです。お好きなだけ叫んで鬱憤を晴らして下されませ」北川は1本の消火器のピンを抜いて加奈に手渡した。 「は、はい。では、遠慮なく」加奈はトリガーノズルを握って、ホースを空中に向けた。 プシュー! 白い粉上の煙が勢いよく飛び出した。 「あたしゃ、つかれたわよ――――――、普通の家に生まれたかった――!」 「やる気もなくただ学校に来てるバカ大学生、やめちまえ――――――――」 「ガクのヘンタイ――――――」 「あたしゃ、これからも負けないぞ――――――――!!」     
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