第3章 バカ夫。

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第3章 バカ夫。

 10月になって、関東はずっと晴天が続いている。乾いた心地よい風が原田の街にも吹き抜けていく。休日には、原田商店街連合主催で盛大な秋祭りも行われ、街にはたくさんの人で溢れかえる。神輿には市内の農村で採れた大根やニンジン、ネギなどがくくりつけられ自然が豊かなことをうかがわせる。  原田川沿いにある雑居ビルの1階で『鬱憤館(うっぷんかん)』の店主・北川洋太郎は、今日も定刻の深夜12時にシャッターをボロロロロとあげて開店の準備をする。準備とは言っても明かりを点けて、ドリンクのグラスと氷を準備すれば、終りである。洋太郎は3席ほどのカウンターに真っ赤なバラを一本ざしで飾ると、BGMにジョニ・ミッチェルをかけた。     *  「バタバタバタバタバタバタバタバタバ、ブオーン」エンジンの乾いた音がけたたましくドッグの中に響き渡る。 「うーん、イヤラシイ音、たまんないな。マフラーを変えただけでこんなにも雰囲気変わるんだ・・・」松永(まつなが)雄一(ゆういち)は、横浜・港北にある空冷フォルクスワーゲン専門のショップ「DOPE」で店長の岡島に興奮気味に言った。     
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