第3章 バカ夫。

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「今の車とは違ってさ、人間が五感を駆使して維持していくわけ。かわいいでしょ」雄一は必死に説得する。 「いくら?」瑠奈は呆れた声で訊く。 「180万」 「どこにそんなお金があんの」 「働く!現に今だって7,800万は稼いでるんだから、不可能じゃないでしょ?」 「家を買う件はどうすんの?」 「家を買う貯金、ちょっと崩してさ、俺もこれから1000万目標に頑張るから」 「・・・もうしらない。勝手にして」瑠奈は赤ん坊をゆすりだした。 雄一はこれを車購入の許可と判断した。     * それから3年がたった。松永家は原田市郊外に新築の戸建てを買った。坂の途中にある家なので、1階部分がガレージになっている。妻の買い物・送迎用のミニバンとあの赤いワーゲンが鎮座している。原田市には駅前や郊外の大型ショッピングセンターに行くためか車が必需な家が多い。こうして妻・夫と2台の車を持つ家も少なくないのだ。 「あのさ、」瑠奈が切り出した。 「2人目、できちゃったみたい」 「そ、そうか、にぎやかになっていいんじゃない。真菜(長女)も喜ぶよ。」 雄一は少し焦ったが、これも神の思し召し(おぼしめし)と考えた。     * ワーゲンは案の定、故障のデパートだった。 ワイパーが片方外れて吹っ飛んだ。ブレーキワイヤーが切れて死にそうになった。     
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