第3章 バカ夫。

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サンルーフは閉まらなくなった。オイルが漏れた。バッテリーが上がった。 そのたびに雄一は 「これが、最後!もう壊れないから」と言っては2万、3万とお金が吹っ飛んだ。 ついにはエンジンがいかれた。50万。さすがに言い出しにくかったが、幸運なことにボーナスが良くて120万入ったので許しが出た。どさくさにまぎれて1200ccのエンジンを1641ccにボアアップした。スピードとトルクが格段に変わるのが実感できた。     * 「パパ、ご飯」真菜が叫ぶまで雄一は気がつかなかった。 雄一は休日をほとんどガレージで過ごすようになった。部品1つ1つを社外製にカスタムしたり、オーディオに凝ったり、車を鏡面のように美しく磨くのである。 イベントにも出ていった。SNSで知り合った友人や、車の店の仲間たちとフォルクスワーゲンでツーリングに出かけるのである。フォルクスワーゲンが一堂に2,30台が集まるとそれはそれは圧巻だった。その場で情報を交換したり、人の車をああでもない、こうでもない、と批評するのだ。こうして他の車を見るたびにさらに自分の車のスペックを上げたくなるのだ。     *       
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