第3章 バカ夫。

6/11
前へ
/72ページ
次へ
瑠奈は瑠奈で韓流アイドルに夢中になった。家事以外の時間は、パソコンにかじりついて、アイドルの動画やファンのサイトを見始めた。1日の中で唯一の楽しみな時間であった。 そんなある日のことだった。買い物に出かけようと日本車のミニバンにのるとフロントウインドーに紙片がワイパーで挟まれていた。名刺?、瑠奈は紙片を手に取った。      いらいら解決!あなたの鬱憤、晴らしてみせます! 発散堂 社長・北川洋太郎          電話042―6×4×―21××  瑠奈はなぜかわからないがその場で捨てる気にはなれず、ポケットにしまい込んだ。       *  夫婦の仲は、どんどんと溝ができていった。雄一が帰宅する深夜にはだいたい瑠奈はDVDかパソコンに夢中になっている。2人の会話はもっぱら娘のことだけになり、たまに雄一が口を開くときは、金の無心のときだけである。だから瑠奈はなるべく雄一の話を聞きたくなかった。 「あのさ、俺もそれなりに出世して充分稼いでるわけ。どんな苦労をしてるか全然わかってないでしょ、たまには労い(ねぎらい)とか、感謝ってものはあなたの口からは出ないわけ?」 雄一はある時、痺れを切らして言ってしまった。     
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加