第1章 洋平君、来客。

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 舞葉はあきらめなかった。週末の休日には洋平のアパートに来て、家事を手伝った。洋平も舞葉をあきらめることができなかった。週末くらいは筆を休めて舞葉と愛を交わしたかった。ただやはり、経済的な面や社会的地位を考えると洋平の中に羞恥心が芽生え、プライドも交際の邪魔をした。(やはり、生温い自分が許せない・・・)洋平はいつもそう思いずるずると5年が過ぎようとしていた。     * 「ヨウちゃん、話があるの」 そう切り出したのは今度は舞葉だった。 「いつもお世話してる派遣さんのエンジニアで、私を気にいってくれる人がいて・・・」 「好きな人ができた?」洋平は訊いた。 「まだわかんない」 「良かったじゃん。これからは婚活も含めて考えないと」洋平は強がった。 「ばか!ヨウちゃんは何とも思わないの」 「前に言ったはずだよ、俺には権利がないって」 「もう、知らない」舞葉は泣きながら洋平のもとを去っていった。     *  洋平は別れた最初は執筆とアルバイトに没頭した。時間があればなるべく図書館で本を読み漁った。しかし、いざとなると男は弱い。だんだんと夜に、決まって酒を飲み始めた。アパートで1人、寂しさを紛らわせたり、思い出に浸ったりした。酔うと思うのは舞葉のことばかりだった。いまごろ他の男に抱かれていると思うと胸が張り裂けそうになる。 「もしもし」 「・・・ヨウちゃん?」舞葉の声がいとおしい。 「おれ、やっぱり間違っていたのかな、舞葉が忘れられない」 「・・・ゴメン、いまはヨウちゃんのことは考えられない」 「どうして?」洋平は訊いた。 「別れようっていったのはヨウちゃんよ」     
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