31人が本棚に入れています
本棚に追加
原田川は夜のネオンを反射して黒い流れの中に、オレンジや黄色、赤、青と様々な色を光らせていた。
洋平は千鳥足で、川沿いを歩いた。「オニイサン、ニマンエン」というお姉さんを無視して二重橋を渡る。
(誰の子かわかんないの)その言葉が頭から離れない。
これから自分が取るべき行動を考えるたびに、アルコールがほしくなった。
ドタッ、洋平は店か何かの看板の支柱に足をとられ転倒した。
起き上がれない。それほどに酔っている。頭の中が遊園地のティーカップに乗っているようにぐるぐる回る。
「ボクチン、ツカレハテマシタ」洋平はつぶやいた。
ふと、目を凝らして上を見上げると
『鬱憤館』
ほの白く、薄汚れた看板はプラスチックでできていて、ヒビが入っている。
しかも酔っていて漢字がぼやけてよく見えない。
「んったく、」洋平はようやっと起き上がって、改めて看板の店を見た。
木製の大きなドアが1枚あるほかは、窓もなくコンクリートで塗られているだけだった。
(あやしい・・・)そう思った。
しかし同時にこの店は何屋か知りたくなった。一見すると会員制のバーか?いや、それほど高級感は無い。スナックか? いやそれにしては目立たない。宗教道場にしてはこんな時間にやっているわけがない。無性に中が知りたくなった。
最初のコメントを投稿しよう!