第1章 洋平君、来客。

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洋平はスツールに腰掛けた。 北川はフレンチの料理屋にあるような黒いメニューを洋平の前に広げた。          ●シェフ北川の気まぐれ鬱憤プラン(1万円~時価)     ●有機で育てた北川さん家(ち)の鬱憤プラン(2万円~時価)     ●アニバーサリー・鬱憤とのマリアージュ(50万~) 「はあ?ぼく酔いすぎですかね、訳がわかりません」洋平は本当に飲みすぎたと反省した。 「お飲み物は、いかがいたしましょう、無料サービスです」北川は棚の酒類を指さした。 「つか、お金がありません。ぼくには。帰ります」 「ははは、ご心配なさらずに。お客様と丁寧にプランを練っていきますので。お見かけしたところ人生の岐路に立っているご様子。ぜひわたくし北川がお役に立てたら幸いです」 「なんで人の人生なんてわかるんですか?」 「わかるからあなたはここにいる。天を仰いだわけですから」 洋平は怖くなった。ついにアルコールで脳がやられたと思った。 「んじゃ、あのブランデー。バカラで出来てんですよね、あれもタダ?ですか」 「どうぞ、どうぞ。グラスを用意します」     *     
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