綱吉公の誤算 第2幕

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3日後、水戸藩江戸屋敷では光圀が江戸詰めの家臣を集め再び『大学』を講釈し、そのあとは能を舞う宴となった。彼自身が『千手』を舞う直前のことである。光圀は紋太夫を楽屋に呼んだ。  「紋太夫、お前は小姓のころからよう我に仕えていたな、それが今では大老にまでなりおうて、何やら良からぬことを吹聴しておるとな」光圀はそう言って長尺の刀を抜いてブスリ、紋太夫を刺した。  光圀は胴から拭き出る返り血をあびてもはや真っ赤な姿になった。  舞は急きょ、代役が立ち、面をかぶって舞ったので、誰もがこれを光圀かと思ったという。  「この光圀、まだまだ現役だわい! 悪政を馬鹿にして何が悪い!」光圀はそう言って刀を納めた。                      了。
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