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帰り道、僕は先輩に謝った。
「すいませんでした」
先輩はやはり何も言わない。僕のせいでプライドが傷つくような真似をさせられたのだ。当然かもしれない。僕は、思い切って言った。
「僕、向いてないのかもしれません。会社、辞めた方がいいのかも」
すると、
「だまれ」
先輩は立ち止まると凄みのある声で言った。そして、
「新人は失敗するもんだ。先輩は謝るもんだ」
そう言うとまた歩き出した。
僕は、思わず泣き出しそうになっている自分に気づいた。
先輩はやはり先輩だ。新人の前を歩いているから、先輩なのだ。
「さあ行くぞ。くっちゃべってる暇があったら、仕事しろ」
僕は何か気の利いたことを言おうとしたが、何も言えず、先輩の背中にただひたすら礼をし続けた。
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