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僕たちが居る場所について
僕はかぜで高熱を出して倒れ、寝ていたらしい。
実際、具合は悪かった。
熱が冷めたとき、いままでのことがすべて悪い夢だったかのように、気持ちは晴れていた。
陰気なはずの僕が、自分でも気味が悪いと思うぐらいさわやかだ。
そう、僕は変わっていた。
なぜだか。
都会への情熱を更に燃やして、しかしこの街をつまらないなどと感じなくなった。
ヒロトなんていう子はいなくなっていた。彼の痕跡はなにいもなく、医院のだれもがそんな子は知らないと口をそろえた。
彼のことで深入りするつもりはなく、好きであるという気持ちも変わっていない。ヒロトからもらった感情は、大切な宝だ。
僕は自分に対して肯定的になった。
その後のことは結論からいうと、無事に大人になり、念願の都会へと移り住んだ。
そこに至るまで人生に様々なことは当然あったが、語りたい部分だけを明かそう。
中学生になると遊ぶことは減った。駄菓子屋にも行かず映画を見る回数も減り、読書量ばかり増えた。一生懸命勉強し、兄を黙らせた。
姉の結婚は破談になった。詳細は知らない。彼女はある日家を飛び出し、それが両親の離婚の引き金になり、僕がむしろ自由を増すきっかけとなった。
僕は母の実家に移り住み、更なる勉学に励んだ。大学進学により中央へ移り、そのまま一人立ちした。
今は結婚して、子供もいる。
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