僕たちが居る場所について

1/3
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ

僕たちが居る場所について

 僕はかぜで高熱を出して倒れ、寝ていたらしい。  実際、具合は悪かった。  熱が冷めたとき、いままでのことがすべて悪い夢だったかのように、気持ちは晴れていた。  陰気なはずの僕が、自分でも気味が悪いと思うぐらいさわやかだ。  そう、僕は変わっていた。 なぜだか。  都会への情熱を更に燃やして、しかしこの街をつまらないなどと感じなくなった。  ヒロトなんていう子はいなくなっていた。彼の痕跡はなにいもなく、医院のだれもがそんな子は知らないと口をそろえた。  彼のことで深入りするつもりはなく、好きであるという気持ちも変わっていない。ヒロトからもらった感情は、大切な宝だ。  僕は自分に対して肯定的になった。  その後のことは結論からいうと、無事に大人になり、念願の都会へと移り住んだ。 そこに至るまで人生に様々なことは当然あったが、語りたい部分だけを明かそう。  中学生になると遊ぶことは減った。駄菓子屋にも行かず映画を見る回数も減り、読書量ばかり増えた。一生懸命勉強し、兄を黙らせた。  姉の結婚は破談になった。詳細は知らない。彼女はある日家を飛び出し、それが両親の離婚の引き金になり、僕がむしろ自由を増すきっかけとなった。  僕は母の実家に移り住み、更なる勉学に励んだ。大学進学により中央へ移り、そのまま一人立ちした。  今は結婚して、子供もいる。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!