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だから僕は言ったんだ。
そう簡単な事じゃない事を、嫌ってほどわかってるから。
それでも君はそんな事を言うのか。
酷い人だなぁ。
僕は、心の中でそんな事を思いながら笑顔を作り言った。
『卒業、おめでとう』
僕の手から巣立って行った彼を見つめる。
彼は難しい顔をして見つめてくる。
眉を寄せ、口は一文字に固く結ばれている。
何がそんなに腹立たしいのかと思ってしまうような不機嫌な顔だ。
けど僕は、何も言わずに見つめるだけにした。
その固く結ばれた唇を、彼はもう一度開いた。
「……好きです」
もう何度目か、と思う程彼は僕にそう言ってくれる。
初めは「はいはい僕もだよ」って軽く流していたけれど、次第に彼はそうじゃない、と必死に見てくるようになった。
でも僕は、教師という立場で彼は生徒だ。
だから、そういう関係は許されない。
そう考えた僕は、彼を拒み続けた。
けれどいつしか、彼の必死の言葉に頷いてしまった自分がいた。
その時の彼の表情は今までの中で1番だったよなぁ。
「……俺は、アンタと付き合えて……嬉しかった……」
低く、優しくて僕の大好きな声が、嬉しいことを言ってくれる。
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