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「先を急ぐぞ」
それは唇を震わせ身体を動かすことのできない隊員らをさらに鎮めるような声だった。
「た、隊長……でも、我々は今からでもアレンを――」
気の弱そうな隊員が声を発するもすぐに切り返される。
「お前もわかるだろう。アレンは囮となったのだ。ならばその役割を全うさせてやるのが情けだ」
「し、しかしアレンは仲間です! だから――」
闇の中できらりと瞳のようなものがこちらを見つめたのがわかった。
早くここから離れなければ危険だ。
「だからなんだ? 私に逆うのなら、お前がここで奴らを食い止めろ。お前のそのナマクラと技量でできるのか?」
「……わ、我々は……仲間を見捨てないと旅立つときに――」
「我々が、ではない。お前が、どうするかだ」
「わ、わたしは……」
「できないのなら、私に逆らうな」
もう一人の隊員が強張った表情でその様子を見ていた。
今すぐにでもここから逃げたい。
そういう気持ちが伝わってきた。
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