二話

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憎めない男だ。何故だかそう感じるし、嘘をつく必要もない。 「柳さんの仕事ぶりが気に入ったからですよ。と、云うかお陰様で上の連中にも感謝されたのでお礼もしたかった」 柳はクスクスと笑い、グラスを目の前に浮かせた。ジョッキを合わせて改めて乾杯をする。 「いや、お礼を言うのは僕の方ですよ。今回は随分儲けさせてもらいましたから」 「そうなのか?」不思議な話だ。私の認識では、彼は会社員で経営とは関わっていない筈だ。現に、社長が頭を下げている時にも関係ないといった風だった。しかも、今回の依頼はシステムの構築上の不備で追加の支払もされない筈だ。 「僕は会社員ですけれど、少し変わった形態で仕事しているものですから。今回は偶々スケジュールが空いていたんで、僕のチームが会社から仕事を請け負ったって感じです」 柳は普段の仕事の進め方を教えてくれた。名刺上は会社に所属しているのだが、会社が受託した案件に応じて予算組みからスタッフの手配まで請け負うのだという。要するに、優秀なスタッフで早く仕事を熟せば見返りが大きいのだと話した。 「なるほど、ウチからしたらクレーム処理を依頼したわけだが、君たちには立派な仕事だったって事か」 「そうですね。僕のチームは優秀ですから、早く間違いない仕事をすれば、各々も儲かるって事です」 「それだから、優秀な人材が柳さんの元に集まるって事だな。良いスパイラスだね」
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