無題短編 一話

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以前なら、棚の上からドリップの珈琲セットを取り出して挽きたての珈琲豆を紙のフィルターに落として、何度かに分けてお湯を注ぐのだけれど、僕の余裕の無さはインスタントのスティック珈琲に向けられる。 サラサラとカップに粉を流し、お湯を注いだ。安っぽい薫りがキッチンに溢れる。チープな感情に浸る事もなく、朝のワイドショーが流れるテレビをボーッと眺める。 相変わらずの話題。チャンネルを変えても同じだろう。赤の他人が不倫しているのがそれ程に面白いのだろうか。馬鹿らしくて仕方ないのだけれど、自分も見ているのだから馬鹿の一員なのかもしれない。
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