無題短編 一話

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マンションのゴミ捨てが表示してあるカレンダーを眺める。今日は生ゴミの日なのだけれど、自炊をする訳でもなく、そもそもこの部屋で食事もしないのだから出すべきゴミの量はたかが知れている。 顔を洗い、歯を磨き、電動のシェーバーで髭を剃る。クローゼットからスーツとクリーニングされた白いシャツを取り出して、ネクタイを選んだ。 『どうしてその組み合わせなのかなぁ……』 そんな風に僕の背中で呟く人は、もう居ない。 『そんなにおかしいか?』 僕にしてみれば、スーツとネクタイの相性なんてどうでも良いのだし、誰かにセンスが良いなどと褒められたところで意味もない。
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