story 1 ~ 序章

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真壁先輩のご両親の事件を聞いた時 胸が張り裂けそうになった。 自分も8年前に妹の留美を亡くしている。 何も出来なかった。  何が不満だったのか。  何がそんなに嫌だったのか。 全くわからなかった。 自分は本当にバカだと思った。 家に寄り付かなくなり  悪い連中と付き合っていると聞き 夜の街を当てもなくずっと探し回った。 この店に出入りしていると聞けば  ずっとその店の前で待ち あっちで姿を見かけたと聞けば  そこに行ってまたずっと待っていた。 俺がずっとそんな事をしている間に 留美は遺体で見つかった。 暴行の痕跡があり  腕には薬を打った痕もたくさん残っていた。 犯人は未だにわからない。 証拠が無かったからではなく  証拠が多すぎたせいだ。 複数の精液に複数の指紋 何人もの人間が逮捕され  その中には未成年も居た。 結局薬の過剰摂取による心臓麻痺で処理され そのうちの大半の人間が短い刑で釈放された。 悔しくて悔しくて涙が止まらなかった。 俺がこんなバカじゃなかったら 留美は死ななかったのかもしれない。 ずっとそう思って生きている。 俺があの人みたいだったらよかったのに。。 矢野は無表情な端正な顔を思い浮かべた。 来生高嶺  真壁先輩の血のつながらない弟である 柏木組次期三代目の柏木元と兄弟分で とても頭のいい 体の大きなその人は 毎回俺を見てはため息をつき 呆れた様にキツイ言葉を投げかける。 言われてもしょうがない。 俺はバカなのだから。 真壁先輩の犯人は逮捕した。 マル暴の許容範囲を超えていたが 坂田先輩がうまく各方面調整してくれ 今もまだ裏付け捜査に関わっている。 高嶺も忙しい日々から解放されたようだった。 高嶺が調べていた人は兄弟分だったらしく かなり慎重に気を遣いながら  事に及んでいたらしい。 そんな中で俺は何度も高嶺を煩わせ たくさんため息をつかれていた。 本当に申し訳ない。 坂田先輩が無事だったのも高嶺のおかげだ。 柏木組の偉い人も  高嶺の働きで命を助けられたと 坂田先輩が言っていた。 本当にすごい。
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