決める

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潜入捜査が終わり少し落ち着いた楓と 待ち合わせをして夕食を共にする。 たまには中華もいいかといつも行く 中華料理店へ連れて行った。 あまり気取らずそれでいて旨いこの店は 昔から柏木組御用達だった。 個室もあるので刑事の楓と行っても 人の目を気にすることなく食事を楽しめる。 食べることが好きな楓は回転するテーブルに並ぶ 中華料理を前に大きな瞳もくるくるとさせていた。 何がいいですか。と聞くと んーとんーと。とメニューを見て それでも絶対高いものを頼まない。 庶民なんで・・と言っていた あの時の楓を思い出す。 いつまでたっても贅沢に慣れず 広い部屋に戸惑い 高いものに恐れをなす 楓にこれからしようとしていることが さて。どう受け取られるか・・と想像し 楽しみでしょうがない。 酢豚を一口で頬張り嬉しそうに口元を 緩めている楓を見つめながら 食べるのを忘れ そんなことを考えていると 楓は首を傾げ シュウマイをひとつ掴んで はい。と俺の前に差し出す。 ぱくっと一口で食べるとものすごく熱い。 「・・あっつ・・」とハフハフしていると 楓はくすくすと嬉しそうに笑っていた。 お返しに俺もシュウマイを掴んで 笑っている楓の口に放り込むと 「あつっ・・・」と途端に顔を赤くして ふうふうと必死に口内で冷やそうと 口を薄く開ける。 いい年をして何をやっている。 自分でそう思い苦笑する。 俺もずいぶんゆるゆるになったものだ。 楓といるとどんどん強張った性根が解け まるで子供に戻ったような感覚に囚われる。 こんな馬鹿みたいなやりとりが 楽しいと思うのも楓といるからだと改めて思う。 ならばずっと一緒にいれるように しなければならない。 お腹一杯中華を食べ 満足の楓を連れて車に乗り込む。 さて。どうなることか。 俺はミッションを開始した。
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