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ぎゅっと楓を抱きしめる。 「もうこれ以上離れているのは嫌なんです。 楓は待てるけれど 俺は待てない。」 潜入捜査で約一週間会えなかった。 もう今の俺はそれが耐えられなくなっている。 前はあんなに会えなくて  それをじっと我慢していたのに。 今は一日だって耐えられなくなっている。 楓の瞳がうるうると潤み始める。 ああ。また俺はこの人を泣かせている。 でもきっとこれは嬉しい涙だろう。 「ずっと一緒にいましょうって言いましたよね。 だからずっと一緒にいる方法を考えました。 楓。一緒にいてくれますね?」 俺の言葉に楓はコクンと頷く。 上げた顔はすでに涙で濡れていた。 ぐすぐすと涙を零し 声が出ずただずっと頷いている。 その顔を両手で抑え 綺麗な大きな瞳に自分を映す。 「泣き虫ですね。」 俺がそう言うと楓は頷き 顔をくしゃくしゃっと崩し 抱きついてくる。 俺の完璧なミッションは成功した。 だが。まだ一つ大きな問題がある。 「楓。」と声をかけると そろそろと楓は顔を上げた。 俺はわざとらしく 首をすくめ 「広い場所は時間をかけて 慣れてもらうしかありません。 そこだけは解決策がありませんでした。 完璧な計画を目指していたんですが。」 と舌を出した。 しばらく俺の顔を涙目で凝視していた楓は だんだんとその瞳を細め 俺のからかいに気がつくと 「早速 下の階の部屋に行きます。」と 頬を膨らませむくれ始める。 可愛い。 「慣れるまでずっと抱きしめてますから。 それなら大丈夫でしょう?」 楓はむくれた表情をゆっくりと変化させ 照れた笑顔を浮かべて口を開いた。 「なかなか慣れないかも知れないですけど。 高嶺さんが作ってくれた居場所だから。。 今まで どこにも居場所が無かったので。。 大丈夫です。すごく嬉しい。。 ありがとうございます。。」 あーあ。 破壊力抜群のその笑顔に心臓を撃ち抜かれる。 結局大逆転だ。 楓は必ず最後にひっくり返す。 俺が喜ばせようとしても その笑顔で すぐに 倍 俺を喜ばせる。 「完敗です。」 俺の言葉に へ。。?と不思議そうな顔をする。 本当に完敗だ。 一生こうやってやり込められていくのか。 まあ。それもいい。 それでもまた何度でも挑戦しよう。 楓が喜ぶ顔をこの先この目に 映し続ける為なら。 また え。。え。。と 戸惑いの声を上げ続ける 楓の後頭部を押さえ顔を近づけて キスをした。
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