決める

8/10
5967人が本棚に入れています
本棚に追加
/802ページ
・・・ 父から呼び出された。 前回と同じように署の近くの喫茶店で 待ち合わせをする。 今回は事前に高嶺さんに話しておいた。 「俺も行きましょうか?」と 心配そうに顔を覗きこんでいたけど これは俺が対峙しなくちゃいけない 問題だから。。と思って首を振り 「大丈夫です。」と答えた。 しばらく黙って見つめられたけど。 わかりました。って抱きしめてもらった。 それだけですごく頑張れる気がした。 髭のマスターさんが 「楓ちゃん。いつもの?」と聞いてくれる。 この間迷惑かけたのに。。 全然気にしてないよ。って顔をしてくれる。 みんな優しい。 カランカランとドアベルが鳴り また機嫌悪そうに父が目の前に座る。 この人はなんでいつもこんなに苛々と しているんだろう。 俺は何でこの人をあんなにも怖がり いつも怒られるままグズグズと 泣いていたんだろう。 母はなんでこんな男と結婚して痛めつけられ 話さなくなり あんな悲しそうな顔を し続けているんだろう。 留美だって 剛だって 俺だって。 なんであんなに辛い日々を送ってこなくちゃ いけなかったんだろう。 留美は死に 母は神経の病気になり 家族は バラバラになった。 またなんか怒ってる。 全然理解出来ないことを延々と言っている。 俺がバカだからわからないんじゃない。 昨日高嶺さんが布団の中で 頭を撫でながら言ってくれた。 「楓はバカじゃありませんよ。 ちゃんと最後まで理解したい。 きちんと自分が納得するまで考えるから 人より時間がかかるだけです。」って。 すごく安心した。 間違ってないって言ってもらった気がした。 この人が勝手な事ばかり言っているんだ。 自分の事ばかり。 家族の事なんて これっぽっちも考えていない。 俺たちが呪われてるなんてきっと大嘘だ。
/802ページ

最初のコメントを投稿しよう!