始まり

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冷たい雨がびしゃびしゃと打ちつけていた。 その身体はピクリとも動かず 雑草が生い茂る土の上に横たわる。 着衣は上半身のみ。 その男性器の根元は紐で縛られ 腕には青黒い痣がいくつも出来ている。 瞳孔は開き その目は何も見ていなかった。 老人は朝が早い。 まだ寝ている家族に怒られるので 家に居ても音も立てられない。 俺が建てた家だぞ。。と不満に思う 気持ちをグッと納め そっと外に出て傘を差し散歩に出かける。 愛犬のジョンは大喜びで 雨を諸共せず ぐんぐんリードを引っ張った。 近くの川沿いが散歩コースで まだ薄暗い土手を歩いていると 愛犬が急に吠え出す。 なんだろう。普段吠えた事など無いのに。 この辺りはのどかで 何か小動物でも 居たのかもしれない。 「ジョン!どうした?」 老人の問いかけを無視し犬は延々と吠え続ける。 ヘビかネズミかな。。と その方向に目を向けると 雑草が生い茂る土手の一角に あられもない姿で横たわる男性を発見した。 「・・あ・・あわわ・・」 びっくりして思わず後ろに倒れ込む。 体が支えられず 手首から鈍い音がした。 激痛と動揺で身を震わせる飼い主を他所に 愛犬は鼻に皺をよせ ただただ必死に吠え続けていた。
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