決める

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なんだろう。 この間と同じ感覚。 お腹の中が沸々と熱い。 そしてだんだんと身体中が熱くなってくる。 でも。あの時より頭の中はすごく 落ち着いている気がする。 怯えも恥ずかしさもどんどん消えていく。 目を瞑ると 高嶺さんが大丈夫って言ってくれてる。 思った通り 言っていいんだよ。って。 「お父さん。」 ああ。俺が言葉を遮るとは思わなかったんだろう。 びっくりして黙った。 自分でも思っていたよりキツイ声が出た。。 昨日の夜 言おうと思った事を手帳に書いた。 一度書けば二度と忘れないし 報告ならちゃんと出来る。 だからきっとちゃんと言える。 「母さんにちゃんとお金を渡して下さい。 あの家のローンは半分以上 ずっと俺たちが払ってる。 最初は母さんが。働けなくなってからは俺が。 家を売ったお金はちゃんと分配して下さい。 知り合いに不動産を仕事にしている人がいます。 あのマンションはローンの残金みても 売ればお金は返るって教えてくれました。 その人は法律にも強くて 弁護士さんもたくさん知ってるから 何かあればすぐに対処してくれるって 言ってます。 新しい女の人が 何を言っているのかは知らない。 知りたくもないです。 ただ 勝手に売ってそのままお金も 持っていくと言うなら 俺も出るところに出ます。」 はあ。一気に喋って喉がカラカラだ。 でもちゃんと最後まで言わなくちゃ。 「せめて最後くらい綺麗に終わらせませんか。 家族で訴訟とか。。。嫌ですよね。」 高嶺さんみたいに言えたかな。 高嶺さんならなんて言うかな。って ずっと考えてたから。 あの人みたいにカッコよくは 多分 言えなかっただろうけど。。 ああ。顔が真っ赤になっている。。 人ってびっくりするとよく口が開くんだなぁ。 俺もそうだけど。。 でも。きっと何も言い返せない。 この人は俺が黙って言う事をきくと ずっとずっと思っていた。 ほら。立ち上がる。 ブルブル震えてる。 最後にまた怒鳴られるかな。 別にそれならそれでいい。 もうこれで最後だから。 この人を家族だと思うのは これが最後。 何も言わなかったな。。 さようなら。 元気でね。
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