始まり

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「では坂田先輩。先に聞き込み行ってきます。」 矢野は全員に向かってペコリと頭を下げ タタタっとドアから出て行った。 はあ。良かった。 何も喰らわなかった。 高嶺は矢野が出て行った後 安堵の息を吐く。 景の事件の後は たまにこうやって ここで鉢合わせるぐらいで接点も別に無い。 電話がかかってくることも無くなった。 それでいい。 アイツと関わるとロクなことがない。 悪い奴ではない。いやむしろきっといい奴だ。 だがとにかく振り回される。 心底苦手だった。 コーヒーを一口飲んだ後 視線を感じ カウンター内を見ると 景は小さく笑みを浮かべ 「矢野とだいぶ仲良くなったのかと 思ってたんだけど。」などと言う。 冗談じゃない。 「なってません。」 ついいつもよりかなり声が低くなった。 顔もしかめているだろう。 景と元がヤバイ。。とでもいうように 顔を見合わせているのも面白くない。 かなり不満げになっていたのか 元は空気を読み 話を変えた。 「で。坂田さん 何の話だったんですか?」 「お前ら極道にペラペラ話すかよ。」 「喫茶店で大声でペラペラ話してたのは 誰ですか。外まで聞こえてましたよ。」 「そんな訳ねぇだろ。 お前らヤクザは いつも聞き耳立ててるからだ。 真壁。弟の教育がなってないぞ。 盗み聞きするなんてな。」 「弟じゃねえって何回言わすんですか。」 「今度柏木の籍に入るんだから 正式に弟じゃねえか。」 「それは・・・。」 ピーーーッ! 声を上げる事さえメンドくさくなるぐらい 毎度繰り広げられるお約束の情景に 景は最近笛を吹く事にしたようだ。 これで累積二枚。 レッドカード 一発退場だ。 俺はコーヒーをグッと飲み干し ぶつぶつ言い訳をしている元の 襟元を掴み ずるずると店のドアへと引きずった。 「高嶺。よろしくな。」 ニコニコと手を振る景に頷きで返事を返し 離せ。バカヤロウと悪態を吐く兄弟分と そのまま次の仕事へ向かった。
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