刻む

2/18
5928人が本棚に入れています
本棚に追加
/802ページ
太ももをさわさわと撫でられる。 ざわっと背筋が震え 気持ち悪さに 全身に鳥肌が立つ。 嫌だ。嫌だ。と思うのに 身体が硬直して一歩も動かない。 助けを求めたいのに喉がふさがり 声も全く出なくなる。 止めて。助けて。気持ち悪い。 やだ。やだ。やだ。。。。 「・・・楓?」 ああっ。と声を出し目を覚ます。 目の前に心配そうな高嶺の顔があった。 思わずぶるっと震え高嶺にしがみつく。 怖かった。。 なんだったんだろう。 「どうしました?何か変な夢見たんですか?」 コクンと頷くが何と言ったらいいかわからない。 どうしてこんな夢を見たのかもわからないし。。 高嶺が俺の腕を撫でながら 大丈夫。。と言ってくれる。 その手は全然気持ち悪くない。 むしろ気持ちよく もっともっと触ってほしい。 いつもそう思うのに。。。。 誰だったんだろう。 変な夢だった。 この間中本に手や腕を触られたからかな。。。 しばらくなんとも思わなかったのに 今頃急に思い出して気持ち悪い 夢を見たのかもしれない。 改めて高嶺の問いかけるような瞳を見る。 ああ。よかった。そばに居てくれて。 でもちょっと恥ずかしくて。話せない。 男のくせにこんな夢見て。。 怖がって魘されるなんて いい年して本当に情けないし。。 「・・だ・・・いじょうぶです。」 声が掠れている。 ああ。喉が渇いた。。カラカラで干上がっている。 何も言っていないのにすぐに高嶺はベッドを降り 俺にペットボトルの水を持ってきてくれた。 本当にこの人は優しい。 「・・ありがとうございます。」 高嶺は首を振り何も言わず俺をぎゅっと 抱きしめてくれる。 その温かさに ほっと息をつくと やっと気持ちが落ち着いた。 高嶺はそのままゆっくりと布団へ倒れ 俺を抱きしめたまま背中をトントンとしてくれる。 身体中が高嶺に包まれ ここが俺の安全地帯だと安堵の吐息が洩れると 高嶺はそっと俺に口づけて 「眠るまで見てますよ。大丈夫。」 と言ってくれる。 コクンと頷き目を閉じると 高嶺の呼吸と心臓の音に安心し またゆっくり睡魔が訪れ 闇へと俺を連れて行ってくれた。
/802ページ

最初のコメントを投稿しよう!