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「今夜 皆さんも呼んでください。」 朝 仕事に出る時に楓はそう言った。 「・・なんでですか。」 不満そうな俺の声音に だって。。と 楓は笑みを浮かべ 「せっかく美味しいお肉。。 仁さんがたくさん持たせてくれたんですよね?」 大きな瞳をくるくると回し 「・・だったらみんなで食べたほうが。。 すき焼きですから。 人数居たほうが楽しいですよ。」 あ。でも。。と楓は首を傾げる。 真壁先輩や三代目さんって味付けどんなのが。。 高嶺さん。。甘いの平気ですけど。 仁さんのは甘すぎたんですよね?。。 どれくらいの甘さだろう。んー。。 真壁先輩って確か お寿司かなり醤油。。 つけるっていうか。。浸してて。。 先に聞いた方がいいかな。。三代目さんは どうだったかな。。えーと。えーと。。 いつもの独り舞台を繰り広げる楓が 見れてホッとする反面 何故楓の旨い飯をあの連中に食わさなきゃ ならない。。と面白くない気持ちがもち上がる。 「楓。」と止めると 「嫌です。」と首を振る。 不機嫌を丸出しにしている俺の顔に え。。と しばらく じっと眺めた後 楓はくすくす笑いだした。 「・・そんなに可愛い顔。。 しないでください。困ります。」 可愛い。 俺がか。 それはお前だ。 楓のようにブンブンと首を振る。 その様が ツボに入ったのか 楓は笑いが止まらなくなった。 仕方ない。 その口に 己を押しあて 黙らせる。 しばらくそうして楓の匂いに 包まれ そっと口を離すと 楓は 真剣な面持ちで俺を見つめた。 「・・皆さんに心配かけたので。 お詫びもしたいし。。 俺は。大丈夫だって言いたいです。」 お願いします。と頭を下げられた。
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