乱される

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本家の座敷には辰雄に久家  元と鬼頭が一枚板の机を挟み座り 俺と力弥は一歩下がって座っていた。 「政友会は無関係だと言っている。」 辰雄が連絡を取り 向こうの組長と 顔を合わせ問い詰めると 政友会の組長である和田は首を振り そんな筈はないと否定したという。 「ヤクの件も否定した。 まあ。本当はどうだかわからないが。。」 久家の言葉に一同頷く。 政友会はうちと違って汚い事も 平気でする輩が多い組だ。 組織ぐるみで中国マフィアからヤクを 手に入れチンピラを使い捌いている。 その情報は既に掴んでいて 当初 うちのシマでヤク中が騒ぎを起こすのを 政友会と結びつけていたのだが。 否定するとあっては 証拠がなければ こちらも動きが取れない。 確かにヤクを捌いているからといって それを俺らに向けているかどうかは また話が別だ。 捕まえたチンピラはどいつも組がらみの 人間ではなく 愚連隊に所属している奴だったり 街を徘徊しているガキだったりだった。 マッチボックスで騒ぎを起こした ボーイは街でヤクを手に入れていて こちらも組が絡んでいる形跡がない。 極道がらみではないのか。 声をかけてきたという男は全て 帽子にサングラスで特徴を隠していた。 一人か複数かもわからない。 うちの組を混乱に陥れようとしている 奴がいる。 そいつが楓をつけている可能性もある。 誰が何のために。。 俺の逡巡を感じたのか 元は冷たく言い放つ。 「誰が何をしようとも。 向かってくる奴は叩き潰すだけだ。」 その声音は三代目のオーラに満ち こういう時の腹の座り方は さすがだなと思わせるものがある。 鬼頭は首を振り 「若はおとなしくしていて下さい。」と 窘めるが元が聞き入れるわけはないだろう。 それでなくてもこの騒ぎに 元は現時点 絡ませてもらえていない。 俺も鬼頭も元の手を煩わせず 解決しようとしている。 それがわかっているからこそ 元はさっきそう言ったのだろう。 俺が叩き潰す。 組を守るために。 元の決意は全員を黙らせるだけの力があった。 はあ。と久家がため息をつき 俺を見て 「高嶺。よろしく頼む。」と言う。 俺は黙ったまま頭を下げ 力弥に目で合図を送り外へ滑るように出た。
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