乱される

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しばらくして一連の騒動は沈静化された。 力弥が指揮をとり 総動員で見回りをして 騒ぎが起こる前に 火種を潰す。 元は出張ろうとしていたが その前に事を納めたため 消化不良でぶつぶつと文句を言っていた。 コイツが出ると街中が大騒ぎになる。 これくらいの事で 元を出す訳にはいかない。 やっと落ち着きを取り戻し それでもこの騒動を起こした奴は 見つからない。 だが 誰かがうちの組に混乱を起こそうと 攻撃していた事は間違いがない。 まだまだ油断は禁物だ。 力弥にもそう言って そのままシマの警備は継続することにした。 久しぶりに景の店にコーヒーを飲みに行こうと 元を誘う。 ぶつぶつ文句ばかりを言っていた元は 途端に機嫌を直し 早く行こうと事務所のデスクの椅子から 立ち上がった。 お前は毎日景と一緒にいるんだろう。 そう言いたくなったが 今はその気持ちもわかる。 揶揄うのはやめておいた。 俺の運転で景の店の近くの駐車場に 車を停め 店のドアを元が開け中に入ると 目の前で急に立ち止まる。 なんだ。どうした。 ふと目線を前に送ると あのロン毛デカがカウンターに座り 身を乗り出して景に何か話しかけている。 迷惑そうでいながら 親しげに話すその二人の雰囲気に 元はたちまち機嫌が悪くなった。 このロン毛は距離が近い。 楓の肩を触った時 殴ってやろうと思った事を思い出す。 今 元はその時の俺以上に 嫉妬心をむき出しにし 本当なら約束通り店を出なければいけないが 頑としてその場から動かなかった。 ロン毛は俺たちを目に留め 首をすくめてカウンターの椅子から降り 「真壁。また来るよ。」と 甘く聞こえる声でそう囁くと 俺たち二人の横を通り過ぎる時に すっと冷たい視線を寄越し そのままドアから出て行った。
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