乱される

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「景。今の何。」 元が途端に不機嫌な声を出し 景に詰め寄っていく。 ああ。またか。 やっと落ち着いたと思ったのに。 これから繰り広げられるであろう ジェラシーと言う名の 恋人たちの痴話喧嘩に 俺はまた巻き込まれていくのか。。 既に言い争いが始まり 景の「だーかーらー。なんでもねーって。」の セリフを聞きながら 俺は煙草に火をつけ 携帯を開いてLINEで楓に 【今日は早く帰れます】と打つ。 すぐに 【喜】と返ってきて その一文字を眺めながら 隣で繰り広げられる言い争いを シャットダウンする。 今日は久しぶりに楓を飯に誘い出すか。 ここの所 帰りが深夜になり 手料理は食えていないが 楓も行動が制限されていて 少し気分転換もさせてやりたい。 頭の中のリストをペラペラとめくり 何を食おうか 何が食べたいかと 楓の笑顔に思いを馳せ 【夜 飯行きましょう。 今 グリーンマイルにいるので 大丈夫な時に電話を下さい。】と送る。 煙草を灰皿に押し付けたタイミングで 携帯が ブルブルと震え 耳にあてると 楓の可愛い声が聞こえてきた。 「楓。何が食べたいですか?」 俺の問いに 珍しく楓が即答する。 その返事を聞き 思わず復唱した。 「・・・ラーメン?」 痴話喧嘩をピタッと止め 景と元がこちらを伺うのを感じる。 「・・高嶺がラーメン屋・・ 行ったことあんのか? 学生んときとかか・・」 景がこそこそ元に聞き 元はふるふる首を振って小声で答える。 「高嶺は学食も食わなかったし。 俺も行ったことないかも。。 いつも行く中華料理屋とは違うんですか。」 「ちげーよ。ほら。商店街にある あの小さい店みたいな。。」 あるわけがない。 知ってはいる。 よく馬鹿みたいに店の前で並んでいるやつか。 飯に興味が無かった俺は 並んでまで食べたいという感覚が無い。 知りもしない不味い物を食わされる 可能性があるものに 金を払う意味がわからない。 電波を通じて 伝わってしまったのか 楓は慌てて ああ。違います・・無理ですよね・・ 何でもないです。・・・今 ・・ 署でそんな話をしていて・・なんでもいいです! ホントに何でも・・高嶺さんの食べたいもので。 すいません・・ 楓の独り舞台をBGMに 「ラーメン。ね。」 俺はもう一度復唱し 頭にリストがない難問に初めて相対した。
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