喜び

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高嶺が猛然と携帯でリサーチを 開始するのを横目に 景と元は 気がそがれ そのまま喧嘩をストップした。 葛西が一人で店にやってきたのは 初めてだった。 「珍しいですね。」と言うと 葛西はくすりと笑い 「迷惑だったかな?」と聞く。 苦手だ。。 自分の腹は見せないくせに 人の腹は探ってくる。 コーヒーを出し葛西は一口飲むと 「柏木は弟なんだっけ。 この間坂田が言ってたけど。」と言い出した。 「ええ。」 「色々事情があってって。何?」 それをこの人に言う必要はどこにもない。 えーまぁ色々と。。。と ごまかしていると 葛西は ふーんと言いながら言葉を繋げる。 「政友会の奴らが 真壁と柏木は ただの兄弟じゃないって言うからさ。」 政友会が? アイツらが俺らの事を把握している気がせず 「血は繋がってないからじゃないですかね。」と また適当にごまかした。 一体 何を探りにきたのだろう。 葛西は俺のつれない態度に この話題はもう答えないなと判断したのか 急に声のトーンを変え 「じゃあ。飯に誘っても問題ないかな?」と 言い出した。 いやいや。 なんでそうなる。。 この人は刑事時代にも何度かこうやって 俺を飯に誘ったがいつも断っていた。 苦手な人と二人で飯なんて 考えただけで 憂鬱だし 元が狂ったように怒るに決まってる。 なんとかのらりくらり逃げていたら 元達がやってきたという訳だ。 他に人がいる時は約束なら帰る所を さすがに何かを感じ取ったのか 元は不機嫌さを隠しもせず その場を一歩も動かなかった。 まあ。。正直 助かったけど。 目の前で 普段通りにニコニコし始めた 元を見て この話は黙っておこうと心に決めた。 それに。。 あの人 本当は何か違う事を 探りに来たんじゃねーかな。。 俺と柏木組との接点とか。 柏木組の動向とか。。。 それは政友会との絡みなのか。 ここの所色々不穏な動きがある中で 葛西の班は政友会が担当だ。 情報が欲しくてうちに来た可能性は高い。 柏木組の次期三代目と兄弟と知り 自分が何を追っているかは隠して それでいて近づいてきているような気がした。 この先大きな動きが政友会にあると 情報を得ているのかもしれない。 そしてそれはもしかしたら柏木組との 間の事なのか。。 景は 首を捻って考え込む。 高嶺はそれに目敏く気づき 景に分からぬように携帯から目線を上げ じっと悩むその顔を見つめていた。
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